めざせ日本語教師~オンライン日本語Tutorのよもやま日記~

普段は派遣の会社員、副業でオンライン(italki, プライベート)の日本語のセンセイをしています。NAFL修了しました。

〈その523〉取立助詞(副助詞)はトラブルメーカー

先日のレッスンでのこと。

「きんぎょ、私の日本人配偶者とけんかしたんです。」ほう。どうしたんですか?

友人との集まりの場に配偶者と参加した際、日本語で家族の紹介をしていたら、配偶者に泣かれてしまった。「あなたは私に人前で恥をかかせた」と言われた。でも理由がわからない、配偶者はどうしてそれが恥をかかせたことになるのか説明してくれない、というわけです。

いろいろ聞いていると、決定打を放った会話は「〇〇(生徒さんの日本人配偶者)はアルバイトだけしかしてないんですよ」でした。ああ、これを人前で言われたら辛い。。。

おそらくですが、生徒さんが言いたかったのは単純に「〇〇(配偶者)はアルバイトを(or だけ)しています」⇒アルバイト以外の仕事は(全く)していない、ということが言いたかったんですね。

でもだけ+しか〜ないという表現にすると、それ以外は完全否定という強い表現になります。結果的にこの会話の場合は、言い方も相まって話者の強い不満を表す表現となったと考えられます。

この生徒さんは大変日本語が上手なんですが、私が聞いてもときどき「キツイな〜」と感じることがありました。文法的に大きな間違いはないんです。

ではどこに問題があるのか?

副助詞(取り立て助詞)です。

きんぎょが思うに、コイツはなかなか手ごわいやつなんです。中級を超えた生徒さんの、日本語の違和感や不適切な印象を与える原因の第一位はコイツだと思ってます。失礼な言い方に聞こえる場合、多くは敬語の問題ではないんです。犯人はコイツです。

副助詞には文字として書かれていない意味合いを付け足す作用があります。

書かれていない意味合いを付け足しちゃうから、学習しにくいんですね。

また今度書こうと思っていますが、特に周囲の日本語話者と話して日本語を覚えた生徒さんは特にこの副助詞(取立助詞)につまづきやすい傾向が感じられます。日常会話でよく使うからそれをコピーして使うんですが、具体的な作用を知らないために無用な違和感を与える日本語になってしまうことがあります。

同じ助詞でも、格助詞なんかは、文法的にはっきりした作用があるから文字で書き表せますし、イラストにすることもできます。他の言語の前置詞や後置詞にも同様の作用があるものが多いので、学習しやすい助詞といえます。

結局この日のレッスンは助詞について学びました。助詞とは何か?どんなグループがあって、それぞれどんな働きがあるのか?

生徒さんは「めんどくせぇぇぇぇ!」とぼやいてました。「でもきんぎょ、私はそんなつもりで言ったんじゃないって、伝えても許してもらえません。」

「そんなつもりはなかった、というのはあなたがこの問題の勝利者になるための理由で、配偶者が辛いと訴えていることを解決する理由にはならないよ。これからも仲良くしたいなら、泣いて辛い悲しいって訴えてる相手に「私は悪くない!」と無罪を主張するより、「ごめんね、辛かったよね」って負けてあげてください。」

この辺からはもはや言語のレッスンではなく、夫婦問題のカウンセリングみたいですね、今文字にしていて気が付きました。