めざせ日本語教師~オンライン日本語Tutorのよもやま日記~

普段は派遣の会社員、副業でオンライン(italki, プライベート)の日本語のセンセイをしています。NAFL修了しました。

〈その74〉「生きた日本語」って? (italki)

「今すぐ使える日本語を知りたいの、生きた日本語!」

 

これは tutor をしていると、けっこう言われます。

 

上記のフレーズは、ある生徒さんの母語で言ったやつを

わたしが訳したものです。

その方の母語では「生きた〇〇語」という言い方は

結構自然な言い方なのか、同じ言い方を何度か聞きました。

 

しかしこれが難しい。

 

「生きた〇〇語」が実際に生きるためには

その生徒さんの生活環境・言語使用状況・

学習レベルなどを正確に把握する必要が

あります。でないと、何にどのように

生きてほしいのかわかりません。

 

おおむね、この「生きた〇〇語」というのは

すぐ毎日の会話で使える、ネイティブ話者が

よく使う言い方のことです。

 

英語だとよくありますね。

「生きた英会話」「ネイティブはそう言わない!」

…気になりますよね、この手の本(笑)

 

実は、すぐ使える日本語を教えるというのは

とてもむずかしいことです。

 

英語と日本語で比較しましょう。

(と言っても、私は言語学のプロとかではないので

 単純な比較です。)

 

英語  I like coffee.

日本語 ①私はコーヒーが好きです。

    ②コーヒーが好きです。

    ③コーヒー好き。

    ④私はコーヒーは好きです。

    ⑤コーヒーは好きです。

 

思いつくだけでこれくらい出てきました。

日本人は I like coffee という一文を

相手や状況、心境によって使い分けます。

 

おまけにこの「わ」「が」の使い分けを

説明となると冷や汗がでます。

(海外の日本語学習サイトで、日本語初級者は

「わ」「が」の使い分けを論理的に学習すべき

 ではない、理解不能だから、と書いているのも

 見たことがあります)

 

生徒さんが言う「生きた日本語」というのは

たいてい②③⑤あたりです。

ただ、どれを必要としているのかは、先生が

説明するか、見抜かないといけません。

 

ただ、生徒さんの母語では、日本語ほど相手によって

細かく違う言い方をしない、という場合が多いです。

 

アジアや中東地域の生徒さんは、程度の差はあれど

「目上の人」という概念を経験している場合が多いです。

言葉による距離のとり方で敬意を表す習慣がもともと

ある場合が多いので、日本語の言い方を覚えきれなくても

概念としては理解できていることが多いと思います。

 

ですので「コーヒー好き」と「コーヒーが好きです」の

使い分けで困ることはあまりありません。

 

逆に、例えば南米の生徒さんは、短い言い回しで

「親しさ」を表すことで敬意を表したいという

傾向が強い気がします。

ですので、フォーマルな言い方よりも少しカジュアルな

言い回しを好む人が多いように感じます。

(特にすでに日本でいる生徒さんの場合、その傾向が

 強いと思います。)

 

ある南米出身の生徒さんが、職場の上司が

「コーヒー好きか?」と言うから「うん、好き」

と言ったら態度が悪いと怒られたけどなんで??と

質問したことがあります。

 

この生徒さんの場合は、母語の会話なら

日常会話の言い方と上司との会話では

丁寧さは変わらないそうです。

なので、同じことを日本語でしたら

うまくいかなかったということです。

 

毎日の会話では「うん、好き」はかなり

「生きた日本語」の部類に入る言葉だと思いますが

なまじ「生きている」ぶん、状況が当てはまらないと

違和感や不快感を引き起こすという好例かと思います。

 

さてさて。

 

今日のレッスンの「生きた日本語」は

「もしもし」と「母の日おめでとう」でした。

この生徒さんのお母さんは日本語を話せるので

レッスンが終わったら電話で

「もしもし、おかあさん。ははのひ おめでとう」と

言ってみてねという宿題を出しました(笑)

 

すぐ使える「生きた日本語」を覚えるのは

語学学習のモチベーションを維持するためにも重要です。